夏本番前に熱中症対策を!(令和2年5月から9月における熱中症による救急搬送状況の概要)
[2021年7月1日]
梅雨の合間の突然気温が上昇した日や湿度の高い蒸し暑い日が発生する6月頃から、熱中症による救急搬送が多くなります。さらに梅雨が明け、夏本番となる7月頃から熱中症による救急搬送が急激に増加します。
また、今年も新型コロナウイルスの影響により、マスクの着用や自宅で過ごすことが多い生活となっています。感染予防に配意し、十分な熱中症対策が必要です。
熱中症とは、暑さや熱の影響による生体への障害の総称であり、正確には、日射病、熱痙攣、熱疲労、熱射病の4つに分類されます。
熱疲労は、入院が必要となる場合があり、熱射病は、重症化することがあります。
令和2年5月1日から9月30日までの熱中症による救急搬送人員は、過去5年間で2番目に多い95人であり、前年と比べ21人増加しています。
構成市・管轄消防署別の救急搬送人員は、甲賀市67人(水口消防署28人、土山分署7人、甲南消防署11人、甲賀分署12人、信楽消防署9人)、湖南市28人(湖南中央消防署16人、湖南石部分署12人)、新名神高速道路0人、名神高速道路0人となっています。
例年、梅雨明けから急激に熱中症による救急搬送人員が増加する傾向にあります。
令和2年においても、梅雨明けが発表された7月31日から急激に熱中症による救急搬送が増加しました。令和2年8月の熱中症による救急搬送人員は66人であり、過去5年の月別と比較して、過去最高の救急搬送人員となっています。
なお、8月に次いで6月及び7月が12人、9月が3人、5月が2人となっています。
熱中症による救急搬送人員一覧表
救急要請時の気温を見ると、31℃台から37℃台で52人が救急搬送されています。その内31℃台から33℃台で34人、また、28℃台で15人が救急搬送されており、気温が上がりきる前に熱中症となる傾向が多く見られます。
下図を見ると気温が高くなくても湿度が高いと救急搬送されていることがわかります。令和2年は、気温30度未満、湿度70%以上で15人が救急搬送されました。
時間帯別の救急搬送状況を見ると、12時から14時まで、14時から16時までがそれぞれ19人と最も多く、次いで10時から12時までが15人でした。特に12時から16時までは38人と多くなっており、全体の40%を占めています。
また、年齢別で見ると15歳未満は18時から20時まで、15歳以上65歳未満及び65歳以上75歳未満は、14時から16時まで、75歳以上は、10時から14時までに熱中症となる傾向が高いことがわかります。
傷病程度別による発生件数は、軽症77件、中等症17件、重症1件、死亡0件となっています。なお、中等症及び重症18件の内、13件が65歳以上となっています。
令和2年の熱中症による救急発生場所は、住居が34件で全体の約35%と最も多く、次いで仕事場(工場等)23件(約24%)、道路19件(約20%)、公衆出入り場所(屋外)7件(約7%)、公衆出入り場所(屋内)4件(約4%)、仕事場(農地等)及び教育機関1件(約1%)となっています。
年齢別で見ると15歳未満は、公衆出入り場所(屋外)が2件と最も多く、次いで教育機関が1件となっています。
15歳以上65歳未満は、仕事場(工場等)が19件と最も多く、次いで住居及び道路が9件、公衆出入り場所(屋内)が3件、公衆出入り場所(屋外)が1件となっています。
65歳以上75歳未満は、住居が9件と最も多く、次いで仕事場(工場等)が4件、道路が2件、公衆出入り場所(屋外)が1件となっています。
75歳以上は、住居が16件と最も多く、次いで道路が8件、公衆出入り場所(屋外)が3件、仕事場(農地等)及び公衆出入り場所(屋内)が1件となっています。
これらのことから15歳以上65歳未満は、仕事場で熱中症になる傾向が高く、65歳以上では、住居で熱中症になる傾向が高いことがわかります。
〇仕事場(屋内)から帰宅後、目まい、嘔吐、気分不良が出現したため救急要請
(令和2年7月 66歳女性 軽症 気温24.2℃ 湿度92.5%)
〇密閉され、高温になった居室に長時間おり、発熱及び嘔吐が出現したため救急要請
(令和2年7月 87歳男性 軽症 気温24.8℃ 湿度82.5%)
〇水分が摂れていないため、脱水症状により救急要請
(令和2年7月 62歳男性 中等症 気温33.0℃ 湿度52.4%)
〇水分が摂れていないため、意識レベルの低下により救急要請
(令和2年8月 95歳男性 中等症 気温32.0℃ 湿度51.9%)
〇数日間食事が摂れておらず、脱力及び脱水症状により救急要請
(令和2年8月 81歳女性 中等症 気温31.0℃ 湿度60.0%)
〇店舗内で作業後、気分不良により卒倒したため救急要請
(令和2年8月 21歳女性 軽症 気温34.8℃ 湿度53.8%)
〇自宅内にて嘔吐が出現したため救急要請
(令和2年8月 85歳男性 軽症 気温37.2℃ 湿度40.5%)
〇歩行中、気分不良により救急要請
(令和2年8月 84歳男性 中等症 気温33.9℃ 湿度54.1%)
〇歩行中、道路上に座り込み立てなくなったため救急要請
(令和2年8月 62歳男性 中等症 気温35.5℃ 湿度47.5%)
〇歩行中、手のしびれ及び嘔気が出現したため救急要請
(令和2年8月 56歳男性 軽症 気温25.9℃ 湿度93.8%)
〇設備の修理作業中、気分不良により救急要請
(令和2年7月 53歳男性 中等症 気温31.6℃ 湿度60.0%)
〇改修工事作業中、両手のしびれ及び気分不良により救急要請
(令和2年7月 45歳男性 軽症 気温28.2℃ 湿度80.0%)
〇野球の練習中に四肢のしびれにより救急要請
(令和2年6月 13歳男児 軽症 気温29.0℃ 湿度54.4%)
〇テニスの練習中、立ち眩み及び足のしびれにより救急要請
(令和2年7月 14歳女児 軽症 最高気温28.9℃ 湿度67.5%)
〇屋内では、窓を開けて風通しを良くしたり、エアコン、扇風機等を積極的に使用し、高温多湿な環境を作らないようにしましょう。
〇こまめに水分、塩分を補給しましょう。特に子ども、高齢者、障がい者には、周囲の方による事前のサポートが必要であり、喉の渇きを感じる前にこまめに水分、塩分補給を促すことが重要です。
〇新型コロナウイルス感染症を予防するためには、冷房時でも換気扇や窓開放によって換気を確保する必要があります。この際、室内温度が高くなるので、熱中症予防のためエアコンの温度設定をこまめに調整しましょう。
〇のどが渇いていなくても、こまめに水分、塩分補給をしましょう。
〇屋外では日傘、帽子等を使用し、できるだけ直射日光を避けましょう。
〇風通しの良い服装等を心がけ、体に熱を溜めこまない工夫をしましょう。
〇指導者等は、のどの渇きを感じる前にこまめに水分、塩分補給を促すことが重要です。積極的、計画的に休憩を取らせるようにして、体調の変化を見逃さないようにしましょう。
〇人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、熱中症のリスクを考慮し、マスクを外すようにしましょう。
令和3年4月28日から全国で運用開始となった「熱中症警戒アラート」を活用しましょう。熱中症警戒アラートが発令された場合は、熱中症対策をより徹底することが重要です。
※熱中症警戒アラートについては、こちら(別ウインドウで開く)でも詳しく掲載しております。
令和3年5月19日に気温や降水量を評価する基準となる平年値が10年ぶりに更新されました。
気象庁では、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新しています。これまでは、1981年から2010年までの観測値による平年値を使用していましたが、令和3年5月19日からは、1991年から2020年までの観測値による新しい平年値が使用されます。このことにより平均気温が全国的に0.1℃から0.5℃程度高くなります。
報道等で使用される「平年並みの暑さ」等は、新平年値によるものですので、昨年よりも高い気温であることを意識し、熱中症対策を心掛けましょう。
夏本番前に熱中症対策を!